Inside AUGM OITA 2012 #4 [ネットワーク]

イベントを配信する際に関係スタッフの頭を一番悩ませるのが、ネットワーク環境。自分の持っているイメージを粉々に打ち砕いてくれる貧弱な上り回線に、多くの中継技術者はBプランで妥協してきた。(という想像)

大分のAUGMにおいては、昨年までの会場には光が導入されており、ステージ脇には快適なネットワークがあったのだけど、今回2012年ではこれが真逆の状況。会場自体は快適になったけど、ネットワークは地元のケーブルインターネットの細い回線が来ているだけだった。もちろん、通常のインターネット利用においては全く不都合は無いのだけども、上りに帯域を必要とする配信においては、これが大きな問題となる。

それで、今回採用したのはモバイルWiMAXルータ+クレードルを屋外に置き、それを基幹回線として屋内のルーターで帯域制御をしながらサービスを分配する事。実はこれ2011年に実行済みの計画で、基となるネットワークが光からWiMAXに変わっただけである。

WiMAXは比較的上り回線の帯域を大きく取ってくれているのが特徴で、電波の掴みが良いところでは数メガbpsで上りをキープしてくれる。会場は大分駅の南側の高い場所にあり、見通しもよく予想通り電波の入りも良かった。

前回2011年からの目玉は、L2スイッチ機能をもつルーターの導入。マイクロ技研のNetGenesis GigaLink1000(MR-GL1000)というルーターは、帯域制御の機能があり、ポート毎に制限をかけたりQoSコントロールを行う事が出来る。詳しくは図を見ていただくとして、要は帯域を多く取りたい配信用のパソコンを優先した形とし、あとはだんだん低くしていくように設定する。

AUGM2012会場ネットワーク図

また今回は、下り利用なら問題ない会場のケーブルインターネットを、来場者向けのWiFiサービスに特化させた。(昨年は光回線を前述のルーターで帯域制限してサービスした)加えて今年は場内にSoftBank WiFiが設置されたので、来場者向けのWiFiサービスは破綻する事なく、イベント開催中も全く問題なかったようである。(WiFiの乱立がイベントのデモ等に影響を与える事が周知されてきた事も、良い方向に向かった理由の一つかもしれない)

すべて計画どおりで、わっはっはと行きたいところだったが落とし穴もあった。それは当日の気象状態。この日は小雪が舞うほどの寒さで、屋外に出していたWiMAXルーターが動作しなくなったのだ。AC電源で充電状態で設置していたが、赤いLEDが点いた状態で止まっている。手で包んで少し暖めると動作する。

これはまずい..と思ったところで、当日スタッフが機転を利かせて、機材搬入で使用した空きの半透明の衣装ケースを屋外に持ち出し! その中にWiMAXルーターを入れ養生テープで目張りするという荒技をサクサクっと行ってくれた。これで寒風がシャットアウトされ無事動作。事無きを得た。開演前で本当に良かった。(マウスさん:超感謝)

来年、会場にもっと早い回線が導入されたら完璧なのだが、果たしてどうだろう。もしダメでもモバイル回線は日進月歩で進んでいるので、1年経ったら更に良くなってはいるかしれない。田舎ではあるけど駅前は必ず最初のサービスエリアに入るしね。

参考:マイクロ技研 GigaLink100
参考:NEC Atermシリーズ